海外がいまよりずっと遠かった時代、
日本独自の手法でつくり出された絨毯、「赤穂緞通(あこうだんつう)」。
いまも残る古緞通は、長い時を経てなお
素材や織り手、技法を創りあげた人々が発する力がみなぎっています。
本展は、そんな古緞通の中でも修復の難しいものを現代によみがえらせるためのエセー(試み)です。
瀬戸内海沿いにある赤穂生まれの絨毯、「赤穂緞通(あこうだんつう)」を知っていますか?
江戸末期から明治にかけて完成されたその緞通は、ウール(毛)でもシルク(絹)でもなく、日本で手に入るコットン(綿)が素材。色は主に藍染をはじめとする植物染料で染め、手機おり。現代では考えられないような手間がかかっています。
今回の展示では、当時使われていた古緞通から、とりわけ修復が難しいものをピックアップし、染色や縫製によるアップサイクルを試みます。
監修は赤穂緞通の織り手であり、古緞通の修復も手がける、阪上梨恵さん。あたらしくないものの中に宿る強いパワーを感じにいらしてください。
聞きもの
「あたらしくないものへのエセー展」でやっていること(インスタライブ)
日程
5月6日(土)— 5月12日(金)
10:00 — 17:00
内容
入場無料、予約不要。
今から100年以上前に織られた古緞通。
その中でも通常の修復作業では難しいほどにダメージを受けてしまったものも多々あります。今回はその「修復が難しい古緞通」のみにフォーカスし、独自の手法でアップサイクルを試みます。
「Essais / エセー」とは「試み」のこと。かつてモンテーニュが自身の著作タイトルに使ったことから「エッセイ」という名でひろまりましたが、その本来の意味は「試み」もしくは「試論」であり、原義はラテン語で「重さを測る」「要求する」の意です。
本展は、修復不可能な古緞通にどのようにパワーを取り戻すのかという試作の積み重ねであり、その重さを測るための展示です。
良質な状態の古緞通と、いちどは修復不可能と判断されアップサイクルされた古緞通たちをあわせて会場で展示販売いたします。
古緞通を用いた、「一日写真館〜オールドスタイル〜」のご案内
かつて人々のハレの日に用いられてきた絨毯、赤穂緞通。今回、あたらしくないものへのエセー展を記念し、茅スタジオの一日写真館が古緞通を使っていた時代にタイムスリップします。
「あたらしくないものへのエセー展」で紹介する古緞通は、特別な日を飾る絨毯として記念写真にも多く用いられてきました。
一方、その頃はフィルムが貴重だった時代、枚数を多く撮ることができず、それゆえに写真の「型」が生まれてきました。
「型」は、それぞれの精一杯の丁寧をもちより、つくられてきた形だったのかもしれません。たとえば、自分が持っている中でいちばん良いと思う服にアイロンをあてておくこと、写真家はひとりひとりの美を見出すために場を整え準備すること。
写真家は一枚一枚を大切に撮り、撮られる側はできるだけの準備をしてそこに向かう。互いに精一杯の丁寧さをもちよる、その気持ちが型としてはまった時、すばらしい一枚が撮れるのかもしれません。
その精神は、一枚に魂を込めるように織られ、修復されてきた赤穂緞通にも通じます。
「 “たくさん” よりも “丁寧さをもちよっていく” ことが今回の重要な意味だと思っています」(写真家 中村紋子)
「一日写真館〜オールドスタイル〜」の詳細、ご予約状況はこちらからご覧ください。
Essais for not new things
Supervising: Rie Sakagami (Akodantsu Mutsuki)
Creator: Ayaco Nakamura, Yumi Kawabe
Co-operation: UCHIDA DYEING WORKS
Photo: Ayaco Nakamura
Planning: Yuka Chabata